『私』だけを見て欲しい
Act.5 一人のワタシ
「どうでした〜?商談〜?」

売り場に戻ると、紗世ちゃんに聞かれた。

「うん…良かったよ…」

何が…って、モチロン商品が。

「どんな商品だったんですか⁉︎ いつ入荷するんですか⁉︎ 」

ワクワクしながら聞いてくる。
『シークレット事項』の一つ。だから気軽に教えられない。

「いつかは未定。入ってきたらどんなのか分かるから」

山崎マネージャーの飼い猫がモチーフ。
それはさすがに話せない。

「いいなぁ。佐久田さん…未発売商品見れるなんて役得ー!」

(…それ、まだ言ってたの⁉︎ 私がいない間、何やってたの⁉︎ )

突っ込みたくなる。
これだからいつまで経っても、仕事任せられないんだ。


今日はさすがに定時で帰れそうな予感。
さっきの今で、マネージャーから仕事を振られることはないと思うから。


「あっ…そうだ、新歓パーティーの予約!」

参加人数決まったから、場所確保しなきゃ。
フロアの社員集めて話し合い。
参加者の顔ぶれ見た結果、バイキング形式の出来る居酒屋に決まった。


「飲み放題コース、1人5000円でお願いします」

電話で予約。
それから次はお知らせの原稿作り。



「あーあ…今日も1人で夕飯か…」

お知らせのチラシ作りくらい、紗世ちゃんがやってくれるかと思ったけど甘かった。
今朝、早く来たのは、定時で上がる為だった。
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