さぁ、オレと恋をしてみようか
「ううん、いいよ。帰宅途中だったら、ちょっとダルかったかもしれないけど、ちょうどお店から出た時だったしね」
「ほんと、あなたはイイ子に育ってくれたわぁ。お母さんに似たのね!」


普通、自分で言うかね?まあ、これも許容範囲以内の発言だから、スルースルー。


「で、プリン何個買ってきてくれたの?お母さん、個数言ってなかったから悩んだんじゃない?」


なんだ、忘れただけだったのか。なら、電話して聞けばよかったなぁ。


「うん、わかんなかったから、とりあえず二つにしてみたんだけど」
「あら、やだ!賢太(けんた)くんの分は、買ってこなかったの!?」


〝賢太くん〟というのは、わたしの〝お父さん〟のこと。


ウチの両親は〝お父さん・お母さん〟じゃなくて、お互い名前で呼び合っている。


娘としては、ちょっと恥ずかしい気もするんだけど、両親にしたら、お互いの〝父・母〟じゃないんだし、当たり前のことなんだけど。


でも、世間一般的には名前で呼び合ってる夫婦は、少ないんじゃないかと思う。


「いや、悩んだんだけどさぁ。ちょっと、チガウことに気を取られちゃって、あまり考えてなかった……」
「ん?何に、気を取られてたの?」


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