さぁ、オレと恋をしてみようか
最初にやることは、店の看板でもある大きな窓。


『外から中が見えるから、ピカピカにしてほしいの』と、入った時に言われた。


最初は、めんどくさっ、て思ったけどキレイになっていくうちに、もっとピカピカにしたいと思うようになった。


お客様にも『ここはいつもピカピカだねぇ』と言われると、すごく嬉しかった。


美和子さんにも『ここだけの話だけど、芽衣子ちゃん新井さんよりもキレイに掃除してくれるから、あとから直し入れなくていいから、結婚してもウチで働いてほしいよ』なんて、言われたことがあった。


わたしをヤル気にさせるための言葉かもしれないけど、それでもじゅうぶん、わたしにとって嬉しい言葉だった。


「おはよう。今日も頑張ってるねぇ」
「あ。おはようございます。今日は昨日よりも少し暑くなりそうなので、気を付けてくださいね」
「あぁ、ありがとう」


わたしが毎朝、外へ出て窓を拭いてると、決まって挨拶をしてくれるおじいちゃんがいる。


なんでも毎日、この時間に散歩するのが日課のようで、いつからか声をかけてくれるようになった。


『パンよりも、ごはんが好きなんだ』と言ってたおじいちゃんは、わたしが笑顔でいつも返してくれるからって、一度パンを買いに来てくれて、それからというもの『ここのパンだけは食べる』と、時たま買いに来てくれるようになった。


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