カフェには黒豹と王子様がいます
第二十三章 声と涙腺
第二十三章 声と涙腺


 目を開けると、白い壁の白い部屋。

 病院……?

 何故ここにいるのか、理解するまでに時間がかかった。

「あ、琴ちゃん」

 そばにいたのは元子さんだった。

 走ってくる足音がする。

 病室の前で声がする。

「徳永!西口が怪我したって?どういうことなんだよ!」

「し!小野田、ここ病院だから」

「わりー」

 元子さんは、立ち上がってドアの外にいるらしい先輩たちに声をかけた。

「みんな、琴ちゃん気が付いたわよ」

 今誰にも会いたくなかった。

 誰とも話したくなかった。

 私は元子さんの服をつかんで、首をふった。
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