カフェには黒豹と王子様がいます
番外編  徳永 優①
番外編 徳永 優 ①


 中学生の頃、オヤジが結婚したいと打ち明けてきた。

 もう僕も中学生。

 その人をいまさら「お母さん」とは呼べず、「博子さん」と名前で呼んだ。

 博子さんはお煎茶の先生で、たまに入れてくれるお茶が最高においしい。

 そんなお茶を入れられるようになりたくて、博子さんにお煎茶を教えてもらった。

 作法や美味しい入れ方のこつだけでなく、お茶をお出しする亭主のお客様への思い。

 日本人ならではの「おもてなしの心」まで、みっちり仕込まれた。

 中学生の頃は博子さんとすごく仲良くなって、なついていた。

 
 高校に入る年に、オヤジが嬉しそうに「兄弟ができた」と打ち明けてきた。

 幸せいっぱいの博子さんの笑顔を見るのが辛かった。

 博子さんはオヤジの奥さんなんだ。

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