夜の仕事を終え、普段の俺はそこで仮眠をするが、まだ騒ぐ店内を後にし、足を進めた。


…深夜の1時半過ぎ。

この時間ですらネオンの街は慌ただしい。


そのネオン街を外れ、裏て通りに入り飲食店がずらっと並ぶそこにある一軒のスナック。

出入り口には既にCLOSEと書かれた看板がぶら下がり、俺はそこを通り過ぎて裏手に回った。


そこの扉に手を翳し引くと、カランと小さく音を立てて扉は開く。

薄く灯った明かりの先に足を進ませると、


「来たんだ」


グラスを拭く沙世さんは笑みを漏らして俺に視線を送った。

誰も居ない室内は静けさを増し、落ち着ける雰囲気をかもちだす。

カウンターと数席があるバーの店はこじんまりとして今の俺には丁度良かった。


「来たらって言ったの、そっちだけど」


ため息交じりに呟き、俺は沙世さんが居るカウンターの目の前に腰を下ろした。


「そうね。来ないと思ってたから。そんな調子だったでしょ?」

「まぁ。沙世さんの誘いは断れないんで」

「なにそれ」


クスクス笑う沙世さんはグラスを拭く手を止め、俺に背を向けて冷蔵庫を開ける。

グラスに注がれる液体の音がピタっと止まると、振り返った沙世さんはコースターの上にグラスを置いた。


「どうぞ」


置かれたと同時にカランと氷の崩れた音が微かに響く。