タイムトラベラー・キス

母と娘。

「ただいま」

「お帰りなさい、連絡くれれば駅まで迎えに行ったのに」


……お母さんにとって、私はいつまでたっても子供なんだな。10年前も同じこと言ってる。
嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。



「家の近くまで車で送ってもらったから大丈夫だよ」


「あら、そうなの。あっ、雫ちゃんと手洗いうがいしなさいね」


「はぁーい」


お母さんの言うことは10年前と変わらなくて、自分の時代に戻ったような感覚になる。
言われた通りに手洗いうがいをしっかりして、リビングのソファに座った。


「同窓会は楽しかった?」


お母さんの問いかけに、私は「まあ」と曖昧にしか答えられなかった。
さっきの竜見くんの言葉が頭の中でぐるぐるとまわっている。

< 113 / 276 >

この作品をシェア

pagetop