タイムトラベラー・キス
過去へ。

映画の後。

「ん……」


ゆっくり目を開けると、目の前には若い高校生の男の子がいた。
周りは薄暗くはっきりとは見えないけど、この整った顔は見覚えがある。

彼はキスを終えると再びスクリーンのほうへ体を向けた。
私も体の向きを直しながら、不自然にならない程度に自分の服装をチェックする。
そして、腕時計で時間も確認しておいた。


……私はとても懐かしいセーラー服に身を包んでいた。
隣には、初めて付き合った男の子がいる。

タイムトラベルが成功した証拠だ。
私、10年前に戻ってきてしまったんだ……。
自分で決めたこととはいえ、本当に過去に戻ってきてしまったことに興奮と不安を覚えてしまう。


映画の内容は全く頭に入らないまま、エンディングまで迎えてしまった。


「面白かったね、そろそろ行こうか」


「うん」


会場が少し明るくなった後、私たちは他の観客と一緒に会場を後にした。
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