【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
すれ違う思い
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守護者たちが露李と水無月を取り囲み、妖力を注ぎ込んでいると、突然二人の体が光を放ち始めた。

これまでにない明るさと美しさ。

金銀の光が視界を覆う。

光が消え、思わず瞑っていた目を開ける。

そこには露李であろう人物がいた。

確信を持てないのは、あまりにも容姿が変わっていたからだ。


「露李、か…?」


結が訊ねる。

彼女はゆっくりと身体を起こし、五人と目を合わせた。

そして、頷く。

訊ねられてしまうという事実に、露李は目を伏せた。

自分でも納得している。

鬼、まさに異形。

露李の髪は金を帯びた銀色、目は金に、そして。

額に一対の角が生えていた。

その姿に言葉を発せられないのは一目瞭然だ。


「氷紀兄様…」


隣に横たわる水無月を見て、また俯く。

私は、また誰かを。

誰かを犠牲にしてまで生きようとは思わない、里を出る前の自分の言葉を思い出す。

そんなこと、どの口が言えたんだろう。

兄と慕ったひとも亡くして、自分はまたきっと皆まで傷つける。

花霞は自分がいると力が増す。

きっと花霞を欲す人はたくさんいる。


鬼、を。


守護者は守ろうとする。

『存在』が、皆を苦しめる──。


「うっわ幽体離脱?ねー露李、俺死んでる!」


何の緊張感もない声が、部屋に響いた。


「おわっ、水無月!?」


結が天井を見上げて叫んだ。

つられて見上げると。


「兄様!?」


透き通った水無月が浮かんで、興味深そうに自分の身体を観察している。


「え、何で」


「いや、無理矢理に力持ちすぎてたからね俺。急に元に戻ったから器─体が巧く受け入れられなかったみたいで」


まさか生きて帰って来られるとはねえ、と感慨深げに頷いた。


「お前っ、いるなら早く言えよ!!」


水無月は結を一睨みしてから露李のそばへ降りてきた。

そして、露李を後ろからきゅっと抱く。


「なぜ一番に貴様と話さなければならない。無駄だ」


「それ素でやってんのか、そうだったら重症だぞ。二重人格が」


「喚くな。耳障りだ」


結が近寄る。

が、露李は水無月の腕をきゅっと握り返す。

いや、正確には貫通しているのだが。


「…露李?どうしたの?」


「連れてって下さい」


唐突すぎたのか、水無月が戸惑った表情をする。


「こんな…姿で、皆に会いたくなかった…」


呟いた言葉は、水無月にしか聞こえないほど小さく掠れていた。


「私がいるだけで皆を、苦しめる──」



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