【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
ささやかな喜びを
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 離れに有明の元手下たちが住み始めて少し。

水無月は寒空の下、イライラと爪先で雪を弄っていた。

ガシガシ音を怪しく思ったのか、文月が裏口からひょいと顔を出す。


「ねえ、何?その音。俺たち中で閉心術やってるから静かにしてくれない?」


確かにそれは迷惑だな、と頭の片隅で思うも水無月にとっては些細なことでしかない。

何と言っても。


「露李が戻って来ないんだよ!!もう五分もあそこにいるぞ!貴様、露李が心配ではないのか!」


恐ろしい眼光で睨みつけるが、文月はため息をつくだけだった。

むしろ整った顔に悩ましげな吐息で色気が増したくらいだ。


「五分でしょ…?そんなに心配なら一緒に入れば良かったじゃん」


「露李が!この俺に願ったのだ、『大丈夫だからここにいて』とな!」


「何を自慢げに言ってるのか知らないけどさぁ。露李ちゃんお前の面倒さに気がつき出したね」


呆れるよ、と呟いてみるが耳に入っていないようだ。


「ああもう煩いな。ここじゃ駄目だから、行くよ」


「どこへ行くというのだ」


「離れ。決まってんでしょ」


「露李の言付けはどうなる!」


「俺も一緒に行くから良いでしょ多分」


適当にも程があるが、水無月は途端に目を輝かせる。


「感謝する」


バカだなあ、と内心呆れつつも、文月は前よりも心を開いた水無月を嬉しく思うのだった。





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