ツバサをなくした天使 〈あた魔女シリーズ〉
03


***

「……よし、あそこだね……」


 あれから一夜が明けて、私は男の子が言っていた森へと来ていた。

 両親には内緒で、朝こっそりと家を抜け出してショウを翼にして飛んできたのだ。

 この森は、昔から何か恐ろしいものがでる、と言われていて小さいころ悪いことをすると、

「バケモノが住む森に放り込むぞ」

 と、よく大人に脅された。

 森からは特に怪しい魔力は感じず、けれど重々しい空気が漂っているのがわかった。

 
「行こう」


 意を決して一歩踏み出すと、翼が返事をするように羽ばたいた。

 ジメジメと湿っぽい森は、ほとんどが苔に覆われていて、当たり一面緑に埋め尽くされていた。

 木々は生い茂っており、漏れ出てくる光は僅かなものだ。

 この辺だよね……。

 あの男の子によると、男の子のお父さんはあまり遠くに行ってなかったって言ってたし。

 辺りを注意深く見渡していたそのとき。

 冷たい風が突如吹き荒れ、木々が不自然に揺れ出した。

 空気の振動を肌で感じた。


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