恋が都合よく落ちてるわけない
ため息
嵐のような週末だった。


須田さんが、
シャワーを浴びてるところを、
挨拶もしないで黙って出てきた。

お金は、今度会ったら返そう。



台風一過の後の空は、
やたら明るくて、ひどく重い気持ちになった、その明るさが私の目にしみた。




アパートに戻り、
鍵を開け、部屋に入った途端、閉めきった部屋にぷーんとタバコの匂い。


リビングのテーブルに煙草の吸殻。
これが嬉しく思えた時もあった。



でも、今は
彼がここにいた証拠を、迷わず
どんどん片っ端からゴミ袋に入れる。



窓を全開にし、空気も入れ替える。
そして、また、深いため息。



「鍵、変えないと…」




きっかけは、実加の一言。



「あのさ、千鶴のいいって、
言ってた西川さんて人奥さんいるよ」



職場で気になる人なんて言われたから、
彼の名前を挙げた。
半分冗談で、聞かれたタイミングで、まだ打ち明けてなかった美加に、彼のこと説明するはずだった。

社内恋愛だし、西川さんも大袈裟にするのは苦手なタイプだ。

なのに、
実加ったら、キッチリ調べて、彼に奥さんがいることまで教えてくれた。


ぼんやり、将来の事、考えてた人が既に

結婚してるって言われた。


「ごめん、美加」
好きな人が出来たらすぐに報告するって、約束したのに。


実加に内緒にしてた私が悪い。
私は、いたたまれず、
その場に泣き崩れた。
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