午前0時の恋人契約
8.カレノコト




ずっと心にあった重い鎖。それは彼のおかげで解けて、歩き出せたはず、なのに。

どうして心が、痛むんだろう。



……分かっていたのに。

彼は、レンタル彼氏。レンタルということは、必ず返す日がくるもので、自分だけのものにはならないこと。

だからこそ、必要以上に関わりを持つことを拒んでいた自分はそれを選んだはずなのに。



彼と仲良く喋る、以前のお客さんという女性を目にして胸が痛い。

その優しさが他の人にも当たり前に向けられているということに、落ち込んでいる。



おかしな、自分。






「はぁ……」



よく晴れた、日曜の朝。自宅の大きな窓から見上げた空は青く、白い雲が流れていた。



レンタル7日目の今日は、日曜日。

だけど契約上、デートが出来る時間はいつも通りの19時からという約束だから、こうしてひとり、独身の休日を過ごしているわけだ。



一週間仕事をしていれば、最低限のことしか出来ない家事。それを補うかのように、念入りに洗濯、掃除を済ませた私は、あまってしまった時間の使い方に頭を悩ませる。



「ちょうど12時、かぁ」



どうしようかな、せっかくだしひとりで買い物でも出かけようか。服を見て、本屋さんに寄って、軽くお茶するのもいいかもしれない。

いつもなら、あまり家から出ることもなく終わってしまう休日。けれど夜に待ち合わせを控え、どうもそわそわと落ち着かない私は、服を着替え化粧もして、昼間のうちに家を出た。




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