午前0時の恋人契約
5.ツヨク ナリタイ





頬が痛くなるくらい、思い切り笑えたのは何年ぶりだろう。



素のまま、思うままに笑うってこんなに心が軽くなるんだ。

そのままの私でいいんだ。

そう、許されたようで嬉しい。



貴人さんの言葉が、笑顔が、臆病なこころを変えていく。

前に進む、小さな一歩を踏み出す勇気を



『市原のくせに断るとか本当むかつく』



留めてしまう、彼女のひとこと。

一気に思い出す幼き日の記憶は、重く、苦しいもの。



『どうせなんの役にも立たないんだから、空気くらい読んでよ』

『いちいち泣くんじゃないわよ!嫌われたくないならそのために努力しなさいっ……ほら!笑いなさいよ!!』



嫌だよ、笑いたくないよ。つらい、悲しいよ。

でも、嫌われるほうが嫌だよ。



笑うから、空気を読むから、ひとりにしないで。





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