午前0時の恋人契約
7.セカイ ハ マワル



よく晴れた、土曜日の午後。

いつもより若干人の少ないオフィス街を窓から見下ろしながら、私はひと気のないフロアの片隅でコピーをかけていた。



昨日の夜は、2日目の夜と同じように貴人さんと食事に行った。

ふたりでごはんを食べて、少し街を歩いて……とそれだけのこと。だけど、つなぐ手も距離も、確実に変わってきているのを感じた。

近づいていると、感じたんだ。



結局昨日も休ませてあげることは出来なかったけど……なにを言っても聞いてくれる人ではないからなぁ。あんまり言うと怒るし。

だけど過ごす時間を大切にしてくれると思うと、嬉しい自分もいて……。



一度だけ、勇気を出して自らつないだ手にも、その手は優しく受け入れて握り返してくれた。

その手のひらに感じた愛しさに、込み上げたのは離したくないという気持ち。



思い出し、だらしなく顔がにやける私に、我に返れとでもいうかのようにコピー機がピーと音をたてた。



「はっ!いけない、仕事中……ってあれ、コピー機止まっちゃった、どうしたんだろう」



見れば、点滅したランプがどうやら用紙切れらしいことを教える。



用紙用紙……そう辺りを見渡すものの、どこかへしまわれているのかそれらしきものは見当たらない。

あれ、どこかにしまってあるのかな?どこだろ……近くの棚を開けても見つからない用紙に、戸惑ってしまう。

うーん、誰かに聞きに行こうかな……。




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