【短編】好き、です。

愛と感情


痛い、心が痛い。



テンポが速くなるにつれて自分の心の中までもが掻き乱されてゆく。



「雫ちゃんっ!なにしてんのっ!」



ドアが勢いよく開くと同時に、切羽詰まったような聞き慣れた声が響いた。



しかし、私は今止められることを望んでいない。



「…うるさいっ!来んなよ!私は弾かなきゃいけないのっ…!」





『雫は本当に上手ねえ』

『雫のピアノの音を聴いてると幸せな気持ちになれるな』



微笑みながらピアノを弾く私のことを見ているお母さんとお父さん。



今では決して得ることの出来ない、昔の思い出。







……そう。




弾かなきゃ。弾かなきゃ、お母さんとお父さんが離れていっ…



必死に音を奏で続けるも、その手は上から降りてきた影に抑えられた。



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