大きな河の流れるまちで〜番外編 虎太郎の逆襲〜

僕の友達とあやめ

あやめときちんと口をきかないまま、2週間が過ぎた。
なんて、声をかけたらいいのか見当もつかなかったからだ。
学校はテスト前で部活は休みだ。僕はなんとなくサッカー部の奴らと集まって一緒にのんびり自転車を引いて歩く。コンビニに立ち寄って、棒アイスをくわえる。たわいもない事で、仲間とふざけ合う。こんな事も公立高校に入る前はなかったと思う。そのうち、帰りにラーメンを食べるって事にもちゃレンジしてみたいとそっと思う。最近やっと現金でこずかいをもらえるようになった。初めて、駿太とコンビニに寄った時、クレジットカードで支払いをしたら、駿太にのけぞるほど、驚かれたからだ。その後
「へー、虎太郎の親父って、東野病院の医者なんだ。」と言って、
「虎太郎も医者になるの?」と聞いてきた。どうかな?
「決めてない」と返事をする。
リュウは、自分で決めろと言って、特に僕の将来について何も言ってこない。でも、どんな職業に就くにしても勉強だけはしっかりしておけ、と言って、勉強はさせて来た。おかげで、普段から、勉強する習慣がついているので、テスト前だからといって、特別に勉強する事はない。(部活がない分、のんびりできる)まあ、うちのリュウと桜子ママはいつも勉強しなければいけない仕事についているので、その姿を見ている僕らも勉強は特別の事ではないのだ。
コンビニの前で溜まって、ふざけあっているところに、ゆっくりと、黒塗りのデカイ車がつけられた。小笠原さんが運転する東野家の車だ。
音も立てずに後ろの窓が開いて、あやめが顔を覗かせる。
「チビ虎」と、僕を見て口を動かす。僕は、突然なことにびっくりしたのと、周りの友人達に、あやめの事をなんて言ったらいいのかわからず、慌てて自転車にまたがり、周りの奴らに
「帰る。」と言って、コンビニの前から逃げ出した。
しばらくして、自転車の速度を落とすと、後ろから、
「虎太郎くーん」と呼ぶ声がする。自転車で追いかけてきたサッカー部のマネージャーで隣のクラス(駿太と同じクラス)の小野さやかだ。
「虎太郎君、速すぎ。汗かいちゃうじゃん」と文句を言って自転車から降りる。僕は立ち止まってさやかを待った。




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