Number10.....?
アイツの部屋②
−−ギィィ…
その時、後ろでクローゼットが静かに開かれた。
「…昔、これを捨てようして凄く怒られた事があるのよ。」
「…これ……あっ!!」
俺はまたもや時代を遡った。今はもう汚い、紙ねんどで出来たでこぼこのサッカーボール。
これは、俺達が小学5年生の時、図工の時間に作ってお互いに交換した物だった。
「…おばさん…貸して下さい。」
俺はおばさんから受け取る。爪をちょうど真ん中に立てると、力を入れ左右に引っ張った。
「…写真と…、銀メダル…。」
中から、写真が数枚とアノ時の準優勝のメダルが出てきた。
写真の殆どは小学生の頃のサッカーチームのものだった。
その内のたった2枚、2人で撮った写真があった。
1枚はアノ選手権の時の写真だ。俺達は肩を組み合い、違う色のメダルを手で持ち上げていた。
アイツのユニフォーム姿を久しぶりに見る。
俺よりも体格に恵まれており、サッカーならGK。野球ならキャッチャーのタイプだ。
小学生の時は、前から数えた方が早かった俺からしたら、羨ましくてたまらないらない体格だった。
しかも、余計な肉が付いてない為、肩が妙にがっしり見える。
「…久しぶりだな…。」
写真に話しかける。アイツはおばさんと同じような穏やかな笑顔を浮かべていた。
もう1枚はサッカー教室に入った時の写真。
2人のユニフォームはまだ汚れていなくて、白いまま。肩を組み合い空いている片方の手にはサッカーボール。そのボールは所々が擦り切れて、もう空気が入らない。
「リフティングやり過ぎて擦り切れたんだよな…。リフティングで長く続いた方が10番付けるとか勝手にルール作って…。結局2人とも10番は付けることなかったけどよ。」
俺が初めて貰ったユニフォームの番号は18。アイツは1だった。それ以来、俺はチームが変わっても18を付け続けている。それは初心を忘れないように、この番号を大切にしていきたいから。
写真の中のアイツを目に焼き付けると、俺も片付けを始めた。

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