恋した責任、取ってください。
6.王子様は泣きっ面にハチ
 
10月。

いよいよ今シーズンのリーグが開幕し、東リーグに属するブルスタは開幕試合から他の追随を許さないほど圧倒的な点差で勝利を飾り続け、現在、6連勝中だ。

試合は毎週、土日に行われ、ホーム試合のほか、相手チームのホーム、その他地方の体育館を移動しながら行われる。

東リーグのチームと総当たり戦で約半年間、勝敗を競い合う長丁場は、秋から冬、冬から春へと季節の変わり目を渡るので、サポートチームとしては選手個々の体調管理に一丸となって目を光らせなければならず、シーズン中ならではの仕事の重みに私の胃は少しだけ悲鳴を上げそうになった。


高浜さんやルイネエ、ザキさんあたりは、ちょっと目を離すとシーズン中なのにガバガバお酒を飲むし、チームは連勝中で調子はいいけれど、なんとなく大地さんのエンジンがかかりきっていないように私には映る。

最初からエンジン全開で途中でガス欠になるよりはいい、と年内いっぱいで産休に入る恵麻さんや、その旦那さんの御手洗コーチも言っているものの、今週末、ブルスタの最大のライバルであるという〝FIRE・HORNET〟(ファイヤー・ホーネット)――直訳すると〝燃えるスズメバチ〟――との初戦を3日後に控えた今日も、大地さんの調子は今一つなようだ。


「あの、だ……岬さん、どこか調子でも悪いんですか……?」


練習前に加わった体調等の自己申告での面談中、明らかに心ここにあらずな状態で生返事を繰り返す大地さんに、思い切ってそう尋ねてみる。

思わず〝大地さん〟と言いそうになって慌てて言い直し、私は向かい合わせに座っているテーブルに少し身を乗り出した。


「いや、全然。ごめんね、試合のこと考えてたから、せっかくなっちゃんが話してくれてるのにあんまり聞こえてなかった。だって相手は〝燃えるスズメバチ〟でしょ? そことだけは毎回タフな試合になるから、どうやったらこっちに有利な試合運びができるか、ものすごく考えちゃうんだよね」
 
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