恋した責任、取ってください。
2.恥はかき捨てるのがよいようです
 
あれから3週間--。

結論から言うと、変化はない。

残念ながら。


新たに手に入れたのは山崎さんことザキさんの好みの女性のタイプだったり、ルイスさんことルイネエから付けてもらった“ウズラちゃん”とう奇妙奇天烈なあだ名だったり。

選手たちも恵麻さんらチームのメンバーも、大地さんの引退の話は時々するものの、佐藤さんから教えてもらったような「ライバルチームに復帰する誰々--」という話は全然しなくて。

また、彼女や奥さん関係も未だ不明のまま。

進展があったことといえば、ご飯を催促するときのもんちゃんの鳴き声がなんとなく『佐藤』と聞こえるようになったことくらい。

めっちゃ好かれている、佐藤さん……!


それにしても“ウズラちゃん”って。

ルイネエの中で今激熱の日本語なんだそうだけど、いくら私が小さいからって、さすがにそれはないような気がするんですけれども。

せめてヒヨコがよかった。

まあ、すっかり浸透しちゃったからいいけど。





そんなこんなで、午後。

体育館に選手が集まり始める時間になると、今日も今日とて私は御用聞きという名のパシリに向かわなきゃならないというわけで。


「そろそろ行ってきます」

「はーい」

「お願いしまーす、ウズラちゃん」


私の両サイドにデスクがある佐伯さんと鈴野さんに声をかけつつ、私は立ち上がった。

左隣が佐伯さんで、右隣が鈴野さんだ。

2人とも私より1つ上の先輩女性社員で、それぞれ、ザキさんと佐藤さん推しなんだとか。


入社してからずっとチーム・ブルスタで仕事をしているそうで、ホームページの管理や、キーホルダーやタオル、レプリカユニホームといったブルスタグッズの管理も行っている。

私は今のところ、彼女たちのアシスタント的な立ち位置で仕事を教えてもらっていて、2人とも懇切丁寧に指導して下さるいい人たちだ。

綺麗だし、とても憧れる。
 
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