嘘つきシンデレラガールと二人の偽王子!?
二、魔法でスーツはドレスになりません。

土曜の16:00.
生憎のどしゃぶりの雨の中、受付が始まる。

ミーハーな塚本さんが受付で新入社員に紙袋を渡し、私が胸にバッジを付けるように説明する。
30分で120人を捌いて17:00には重役を下のロータリーでお出迎えするらしいから、此処でもハードだった。

「貴方、スーツにしたのね。別にフォーマルな格好で良かったのに」
「仕事なので」
「それに、その丸眼鏡、お婆ちゃんみたいよ」
「祖母のを貰ったので」

雨でコンタクトが目に合わなくて、急遽眼鏡にした。
髪もボブに近い適当な髪だからそのままだし、本当にパッとしない契約社員だろう。

「あ、来た来た。お嬢様がたのお出ましよ」
塚本さんがいつもより更に背筋を伸ばして笑顔を貼りつけた。
塚本さんは、黒の花柄の刺繍が入ったマーメイドラインのワンピースで落ち着いた大人の女性の理想のような姿だったけれど、エレベーターから降りて此方に向かってくる4人の女性は違った。

華やかな、ピンクや赤のドレスに白のボレロ、髪は綺麗にセットされて身につけているジュエリーは勿論我が社の新作ジュエリー。

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