【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「もうグダグダすんの止めたわ。アタシ、燭が女として見てくれるまで頑張るし。そういう目で見て手出してくれるようにすっから」


そして、誰にも言い返せないくらいの勢いで言ってのけた里佳子は、自分の荷物を持って足早に出口まで歩いて行く。


「アタシ帰るわ。いつまでもここにいたらナメクジにでもなっちまいそう」


言うだけ言って扉を開いた里佳子は、去り際にもう一度振り返った。


「でもまぁ……ありがと、な」


小さな声で放った礼の言葉と、眩しくて直視出来ないような笑顔を送った里佳子は、早速とこの場からいなくなってしまう。


「は、はは!ははは!リカコ、カッコイイ」


しばらく沈黙していたその場だったが、ルイが声を上げて笑い始めた事により、沈黙は破られた。


ルイに灯った自我は、心は、ルイにどんな感情を与えているのだろう。なんて、人間臭い顔で、声で笑うのだろう。


「ほんっと、ルイの言う通り。アイツカッコイイわぁー。……燭、どうすんの?あんなカッコよく告白されてさ」


いつの間にか泣き顔から笑顔に変わっていた成に問われた燭は、まだ呆気に取られたような顔だったが、柔らかく顔を歪めた。


「俺だって、とっくの昔にリカちゃんを女としてしか見てないけど。……まぁ、リカちゃんがどう頑張るか楽しみだから、皆秘密ね」


「うわぁ、燭って結構良い性格」


「良い性格?悪い性格の間違いじゃないの?ナル」


燭の意地悪な一面、それを表す成の言葉に疑問を持つルイ。


結局、何かが解決したかと言えばそうでも無いかもしれないけれど、それでも、燭の顔は清々しい笑顔が零れていた。
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