【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
成がここで笑っている。まだ怒る事をすぐには取り戻せなくとも、いつか苦しかった日々に悲しみや諦めでなく怒りが湧くように、私が、ルイが、里佳子が燭が、周りの大人が、彼を守って行く。


そう決めて、限られた出来る事を私達はやるのだ。出来る事は限られていても、時間は平等に限りなく私達にはあるのだから。


「ふぃー、今年も終わるねぇ。宿題も今年中に片付いたし、後はだらけるだけだぁ」


そして年の暮れ、自宅から持ち出したコタツに深く収まりモンペを着込んだ成は、私の家の客室をしっかり自身のパーソナルスペースに変えてしばしの休息を楽しんでいる。


手を伸ばした先には、食べかけのポテトチップスとミカン。


その光景に、年越し蕎麦を父に運んで成の部屋へ合流したルイは、音を立てて体内のスーパーコンピュータを動かし始めた。


「コタツに、ミカン、それからモンペ……解析結果、ナルは『ダメ人間』になろうとしているね。エミリ、あのヒトをダメにする機械はどんな光線を布団の中でナルに浴びせているの?恐ろしいね」


「ただの遠赤外線です。冬の凍えきった身体を温める道具ですから。ダメ人間になってしまうかは個人差で、コタツに非はありません」


冷静に答えると、ルイはどこから引っ張ってきた情報か定かではないが自分が調べた結果と私との答えの差に、思考を停止させて首を捻る。
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