【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「はーあ、なんつーか、お前と居ると毒素抜けるわ。変なの」


最後のひとかじりを終え、メロンパンの空袋を、案外几帳面に結んで小さくしてコンビニの袋に戻した御堂里佳子は、飛び跳ねるように立ち上がる。


「ありがとな……笑里」


そして、さっきの柔らかなものとは違う、今度は眩し過ぎる笑顔を向けた御堂里佳子は、私の頭をポン、と軽く撫でると、踊り場から自分の世界へと、走り出した。


その笑顔も、その行動も、そして、私の事を名前で呼んだ事も、全部全部、何だかむず痒くて、でも、それはいくら手を伸ばしても届かないから掻く事が出来ない、そんな感覚。


今日はずっと、あの夢の延長線上で時が過ぎているみたいで居心地が悪い。


「嫌だなぁ……」


何が嫌かと言えば、多分、この居心地の悪さを本当の意味で嫌がってない自分。


そして、自分で捨て失せたくせに、御堂里佳子の笑顔につられて、一つの感情をまた引っつかんでしまいそうな状況が、嫌なのだ。
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