契約結婚の終わらせかた

8月~特別な夏休み





夏にふさわしくギラギラ輝く太陽。晴れ渡った青い空。遠くに見えるのは遥かなる水平線を湛える大海原。白い砂浜に続くヤシの並木道。


「うわ、すごい!見て見て。あんなにヤシの木がある。なんか南国みたい」


はしゃぐ心愛ちゃんの楽しそうな声が後ろから聞こえてきます。他の子ども達も思い思いに外の景色を楽しんでますが……。

「……」


真横に目を向けると、車を運転する伊織さんの目が怖い。視線だけで今にも人を殺せそうです。


そりゃ、そうだ。せっかくの夏休みなのに、おはる屋をはじめとするみんなで海に行くことになったんだから。
普段から人嫌いっぽい彼がこんなに大勢の人と行動しなきゃいけないんだから、何の苦行かと。


だけど、と私は思う。


伊織さんにも、たくさんの人といろんなイベントを楽しんで欲しいなって。


ひとりぼっちで部屋にいるより、こうして太陽の下に出ていろんな体験をして欲しい。きっと彼は、幼い頃にこういう経験が少ないんだと思う。


春に藤祭りで露店を初めて体験した位だから。こういうのも無駄にはならないはず。


後続のもう一台のワンボックスは葛西さんが運転してて、彼の妻と娘さんも一緒に乗り込んでる。


メンバーとしては私と伊織さん、葛西さんに彼の妻と娘さん。おはる屋のおばあちゃん。空くんと心愛ちゃん兄妹。大地くん。賢くんと真理ちゃん兄妹。後は何故か美帆さんがちゃっかり着いてきてた。

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