契約結婚の終わらせかた
一年目·秋~深まって

9月~母






「で、こうしてタオルで体型を補正すると、キレイに見えるんです~」

「へ~着物を着る時ってタオルも使うんですね。初めて知りました」


ただ今、葛西家のマンションで着付けの講習中です。くるみさんの手で体にタオルを巻かれながら、下着段階での体型の補正方法を学んでた。


夏にお会いした時に浴衣を着付けてもらった上、厚かましくも着付けのレッスンまでお願いして。8月の末から週1のスケジュールで習ってます。


くるみさんはもともと看護師をしていたらしいけど、今は夫の葛西さんが働くことを良しとしないから専業主婦中。だから、彼女は時間はいつでもありますよ~とにこやかに応じてくれた。


ちなみに着物は持ってないから、今のところくるみさんに借りてる。おばあちゃんのを借りたかったけど、私が不器用だから着付けなんて覚えなくていいって絶対反対されるもんね。


一応、基本的な下着やタオルや足袋は買い揃えたけど、長襦袢は高くて手が出せない。ちゃんとした襦袢はきちんとサイズを計って仕立てる必要があるからなあ。


(一着くらい着物が欲しいけど……今のおはる屋だけの収入じゃあ厳しいな)


伊織さんと離婚した後でも、きちっとした着物を一着持ってても困らないし……。


そう考えて、胸がズキッと痛み泣きそうになってきた。


「あら、大丈夫ですか? 胸を詰め過ぎて苦しい?」


帯締めを結ぶくるみさんにまで、余計な心配をさせて情けない。しっかりしろ! と自分を叱りつける。


「そ、そうですね。ちょっとだけ。でもガマンします」


へらり、と笑ってごまかす。くるみさんにも、気持ちを悟られる訳にはいかなかった。


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