契約結婚の終わらせかた

1月~ライバル宣言




年が明けて1月1日。


「……」

「……」


今、私の目の前にあるのは離婚届。


妻である私の欄は記入·捺印済み。後は伊織さんにも書いて捺印してもらうだけなのだけど。

ダイニングテーブルで向き合う私たちは……なぜかお雑煮を食べてた。





去年の12月25日。大事な日だから、と伊織さんとの待ち合わせ場所で待っていたけれど。

――彼は来なかった。

それでも雪の中で勝手に待ち続けた私は、酷い肺炎を起こして入院するはめに。


伊織さんは汗だくになって駆けつけてくれた。


私を、妻だと認めてくれた。

嬉しかった。伊織さんはもう私がいなくても大丈夫だって思ったから、彼の幸せを思って離婚を切り出したのに。伊織さんは一切聞いてくれなかった。


どうして?


伊織さんが私を必要な理由なんて解らないし、確かに契約では結婚期間は1年となっていて、いわば契約破棄になるけど。伊織さんが愛してもない相手とこれ以上一緒に暮らす利点がわからない。


なのに、伊織さんはその後離婚の話をすると貝のように黙ってしまう。

入院中は伊織さんが毎日顔を出して、いろいろと持ってきたりそばに座って仕事をしたり。とにかく時間が許す限りはこちらへ来てた。


もしかすると夫だから義務を果たそうと?


「伊織さん、仕事が忙しいのにいいんですか?」

「葛西に任せてあるから問題ない。それより、ちゃんと寝てろ」


ポンポンと頭を叩かれて……何のつもりかがわからない。


そんなに優しくされたら辛いだけなのを、伊織さんは全然わかってない。残酷な人だなって人知れず泣いた。


< 214 / 280 >

この作品をシェア

pagetop