契約結婚の終わらせかた

7月~ライバル宣言?




初めて伊織さんの世界に少しだけ触れて、そして知った。


自分がどれだけ甘えて努力を怠ってきたかを――。




「はぁ……」


おはる屋でいつものように店番をしていると、自然とため息が出てくる。


所狭しと駄菓子や昔懐かしい玩具に文具が並ぶ店内では、50年ものの木製のアナログ時計がチクタクと時を刻む。


ここは、何年経っても変わらない。時間が止まったような空間にいると、ついつい忘れがちだけど。私はもういい年をした大人なんだ。


小学生とは違う。本当なら身だしなみで日常的にお化粧をしなきゃいけないのに。今までは日焼け止めとリップクリームを塗るくらいで済ませてた。


お金がないことを理由にサボってきたツケが今一気に来て、心をズシンと重くする。


駄菓子でフルメイクしたら絶対何かあったか訊かれるし、笑われるだろうけど。女の子達も小学校高学年や中学生になると100均のメイク用品に手を伸ばすようになるんだよね。


雑誌や友達からの知識で頑張って可愛くなろうと努力を始めるんだ。


そうなると、私はそんな子達からすら負けてる。勝ち負けの問題ではないけど、女としてどれだけダメかを痛感して落ち込んだ。


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