どこまでもパラレル
智子は昔と変わらぬ幸薄そうな笑顔で、あからさまな嘘をついた。
智子が結婚し、そして最近離婚したのは噂で聞いていた。
智子のように、同性にも異性にも友人の少ない人間のことでも噂が伝わってくることを不思議に思ったものだ。
噂の方が嘘である可能性もあったが、智子はいつもと同じ顔をしていた。
振られたあとに、フラフラとやって来る時の顔だ。
コイツの表情は、俺が救ってやらないといけないんじゃないかという気分にさせられる。
その気持ちを恋なんじゃないかと自分でも思ったこともある。
でも、智子はいつも俺ではない誰かと付き合っていた。
その度に、幸せになって欲しいと思った。
だから、この気持ちは恋などではない。
ちょっと幸薄そうな女のことが、気になってしまうだけだ。
しかし、俺が付き合ったり好きになったりした女のコたちも俺たちの関係を誤解した。
そんなこともあって、俺の恋は長続きしたことがなかった。
俺は、なるべく智子と距離をとるようにした。
大学を出てからは、完全に智子とは会わなくなった。
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