強引上司の恋の手ほどき
第六章 恋とチョコレート
《第六章 恋とチョコレート》

あっと言う間に二月に入った。コンビニに入るとたくさんのチョコレートが陳列されているそんな時期になっていた。

うちの会社は、義理チョコを配布する習慣は入社した当時にはすでになかった。噂では金子さんと加藤さんが廃止したとまことしやかにささやかれていたけれど、真偽の程は確かめていない。

でも私は今日、チョコを準備してきていた。

「はい……これ。お口にあうといいんですけど」

デスクに持っていくと、驚いた顔をして私を見上げた。

「いいの? これ、グレースのチョコじゃないの!?」

美月さんが驚くのも無理は無い。超のつくほどの高級店のチョコレートでこの時期になると、毎日行列が途切れることはない。

「実は、この間たまたま入った百貨店のバレンタインフェアで取扱ってたんですよ。もちろん並びましたよ」

「千波〜なんていい子なのっ!」

感極まった美月さんが私を抱きしめたまま、聞いてきた。
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