強引上司の恋の手ほどき
第三章 恋の迷い道
《第三章 恋の迷い道》



いつもの仕事をこなしながら、課長に言われた資料も探す。そこまで急ぎではないと言われたけれど、できるだけ早く準備したい。

「千波、ここ企画部の伝票だけど日付が違うから訂正印もらってきて。加藤に言えばすぐにやってもらえるだろうから。それと次やったら経費払わないってキツく言っておいて」

相変わらずの美月さんの勢いに、私は従順に従う。

これくらいの勢いでいかないと、仕事進まないもんなぁ。

私達のする仕事は、基本的には社内の人間を相手にすることがほとんどだ。そのせいかどこかルーズになっている人も少なからずいる。期限がなかなか守られなかったり、不備があったり。

そこをキチンと美月さんのように言える人がいないと、仕事の量が途端にふえてしまう。

私もそこは見習わないといけないと思いながら、言われた通り企画部へと向かう。

もうすぐ昼休みだ。休憩に行かれるまえに、訂正印だけはもらいたいな。

企画部の事務の加藤さんは美月さんと同期で話しやすい。美月さんつながりで何度か話をしたこともあるし、仕事でやり取りしたこともある。比較的迅速に何でもこなしてくれるありがたい存在だ。

企画部に到着すると、すぐに加藤さんが気が付いて出てきてくれた。

「あら、なにか不備があった?」

「はい、ここの出張旅費の件なんですけど」

説明すると該当の社員のところへ行って、すぐに訂正印をもらってくれた。私が説明して印鑑もらうよりも、加藤さんに間に入ってもらうほうが確実に早い。

「ありがとうございます」

「いえ、私こそ気が付かなくてごめんなさいね。担当者にも説明して私も気を付けて見るようにするから」

そう言ってもらえると、助かる。
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