ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
未来のために
― ― ― ― ―

「ん…。」
「あ、起きた…。」

 ぼんやりとする目をこすって視界がはっきりすると、そこにいた人に顔が熱くなった。

「キースっ…!」
「疲れて寝ちゃったみたいだね。おはよう。」
「おは、…よう。」

 額が重なる距離でそんなことを言われると、心臓はわかりやすく音を早める。

「傷の確認もかねてお風呂に入りたいんだけど、どこにあるのかわかる、ジア。」
「わかるよ!あたしもお風呂入りたい!」
「じゃあ行こうか。あ、でも着替えがないや。クロハのカバンの中だ。」

 コンコンとドアがノックされる。

「はーい!」
「失礼いたします。」

 入ってきたのはシラだった。

「シラ!あ、ランの様子は…!」
「まだ目を覚ましていませんが、容体は落ち着いたとのことでした。」
「…よかった…。」
「キース様。」
「は、はい。」
「…適切な指示をありがとうございました。おかげでランは生きています。」
「あ…いえ、みんなが頑張ってくれたからです。助かってよかったです。」

 シラは深く頭を下げた。

「ところで、お二人はどこかへ向かわれますか?」
「あ、えっとお風呂に入りたくて。大浴場は開いてないと思うんだけど、軽く体を洗えるところってあるかな?」
「小さめの浴場を解放いたします。別々にご用意しますか?」
「へっ?」
「え!?」

 ジアとキースは真っ赤にして顔を見合わせる。

「べ、別々だよ!何言ってんのシラ!」
「あ、失礼いたしました。着替えも用意いたしておりますので、どうぞ。」

 二人とも顔の赤さが引かないまま、浴場へと向かった。恥ずかしくてジアはキースと顔を合わせられないまま、歩き続けた。
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