きっかけは誕生日
後日談
*****




「小柳先輩。お昼食べに行きましょう~」

 書庫の目録を置いて、声をかけてきた咲良ちゃんを振り返る。

「カフェでいい?」

「あ。俊兄の店ですか?いいですよ」

「バックとってくるわね」

「ご一緒します」

 ニコニコついてくる咲良ちゃんは、相変わらずかわいいなぁ。

「先輩って最近綺麗になりましたよね~。誰かいい人できました?」

「え? そう? あまり代わり映えしていないと思うけど」

 結果として、私が選んだ服はいつもと同じようなタイトスカートやブラウス。

 だけど、咲良ちゃんのお姉さんのお店で薦められたのは、とても女らしいヒラヒラなブラウスや、ぴったりしたタイトスカートだったけれど。

 今着ているブラウスも、衿にヒラヒラついているし、ウエストに向かってスリムになっていくタイプで、バックスタイルがとても綺麗に見える。

 咲良ちゃんのお姉さんいわく、ちょっとした違いで、女らしく見えるか、野暮ったく見えるか変わるのだそうな。

 バックを持って、通用口を抜けると、咲良ちゃんが不思議そうな顔をした。

「格好もそうですけど、何だか表情豊かになったと言うか。艶が出てきましたよね?」

「お化粧は前と一緒よ?」

 ママにチークを借りて、自分で塗ってみたら、まぁ、見事にりんごほっぺになったし。

 あれは私には無理な技術だ。

「誰ですか? 絶対にその人の影がチラホラ見えるんですけど~」

「…………」

 まぁ、事あるごとにからかわれてますけどね。

 金井さんは、私が顔を赤らめるのが楽しくてしょうがないらしい。

 際どいことも言ってくるから、どうしようかいつも困る。

 困りながらカフェのドアを開けると、カランコロンとドアベルの音と一緒に塚原さんのいらっしゃいませと、金井さんの無言の会釈に出迎えられた。
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