君の花嫁~大学生編~

学生だけど


―――……

「んー」


講義が終わって、私は大きく伸びをして身体をほぐす。
この大学の英文科は、半分の講義が英語で行われる。
もとから英語はさほど苦手ではなかったが、授業のレベルは高くいつも緊張はほどけない。
海外にも企業を持っているame-miyaを継ぐ伊織は実はなにげに英才教育を受けて育っているが私はそんなはずもない。
だからこそ、雨宮家の嫁として恥ずかしくないよう勉強をするため、英文科を選んだのだ。

腕時計を見ると、そろそろ迎えの時間になってきた。
今日はこの後、料理教室と着付け教室兼茶道の稽古がある。

結婚してから、雨宮家から言い渡された最低限の習い事が、茶道、マナー、着付け、英語、ピアノだった。
ピアノは子どものころから習っていたから特に問題はなかった。英語も大学で学科を選んだことでクリアされる。
後は、マナーと茶道、着付けである。ちなみに料理は自分から習いたいと申し出た。

本当は学校もあるし、習い事はあまりしたくなかった。しかし、伊織も経営学を学びながら、定期的に義父の会社まで出向き、経営や経済、仕事について学んでいる。
頑張っている伊織の足は引っ張りたくない。
だからこそ、私も頑張らねばならないと思っている。

友達に挨拶し、迎えの車が来ているところまで向かっていると、突然後ろから声をかけられた。


「雨宮さん」


聞きなれない声に振り向くと、そこには緊張した表情の男性が一人。
見覚えがある。確か同じクラスの男子ではなかっただろうか。正直、英文科は生徒数が多く、同じクラスでも80人近くいるため名前までは覚えきれていない。

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