イジワル上司と秘密恋愛
2・明日泣くキス
【2・明日泣くキス】


綾部さんに抱きすくめられたままいつの間にか眠ってしまった私が次に目覚めたのは、もう窓の外がすっかり明るくなってからだった。


朝日に照らされて全景の見えた部屋は少し無機質で、けれどシックで、ひと目でどこかのホテルだと分かった。

そして、身体を起こしたベッドには私ひとりで、部屋の奥からシャワーの水音がする事に気付いた。

……綾部さん、シャワー浴びに行ってるのか……

ふと壁に掛かっている時計を見れば針は七時を指している。始業時間の十時までには幸いまだ時間がある。

泣き疲れたせいかどこかぼんやりする頭を必死で働かせると、私はベッドから静かに降り、テーブルの上に掛けられていた服を急いで身に付けた。

そして手持ちのコンパクトミラーで軽く髪を整えると、物音をさせないようにそうっと出口へ向かう。

シャワーの音が途切れなかった事に安心しながら、私は部屋から静かに抜け出し、そのまま急いでホテルを後にした。

 
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