鬼姫伝説Ⅲ

襲撃





  口が悪くて、少し乱暴な所があるけれど、優しくて暖かい人よ






お母さんが一度だけ、お父さんの事を教えてくれたことがあった。
何度も私がしつこく聞いたら、そう教えてくれたんだ。



そう言ったお母さんの表情も優しくて暖かくて。
とても幸せそうだった。


そんな風にお母さんを幸せにしてくれるその人は、今どこにいるんだろう。



なにも知らないその人の事を、知りたい。




「飯は」




ぼんやりとしていた頃、後ろから声をかけられた。
振り向くと鬼羅さんで。


河原で泣いていた時の鬼羅さんではなく、もうすっかりいつもの強気な鬼羅さんに戻ってた。




「もうできてますよ」




あれからずいぶん経っているんだもの。
ご飯を作る時間はたんまりあった。
それ程長い時間、鬼羅さんは泣いていたのだろうか。




千代さんという人を思って・・・?




< 51 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop