鬼姫伝説Ⅲ
失くしもの
「ない・・・」
鬼の襲撃もひと段落した時。
私は青ざめて着物の合せの中をまさぐっていた。
ここにいれていたはずの巾着がないの。
お母さんの大事なくしが入っているのに。
「どうした?」
「快斗・・・。どうしよう、くしがないの」
「え?千菜さんの?」
「うん・・・。あの騒ぎの時に落としちゃったのかも・・・」
どうしよう・・・。
お母さんが毎日見つめて大事にしていたものなのに。
特別に貸してくれたものなのに。
「いいから探そう。きっと遠くにはいってないはずだ」
「うん」
「それに、そんな小さなもんじゃないだろ巾着袋って。だからすぐ見つかるって」
「・・・うん」
快斗が一緒に探してくれた。
歩いた道を、あの小屋の中を必死で探す。
それでもなくて。