クローバー♧ハート - 愛する者のために -
プロローグ

「ハルっ!急がないと、幼稚園に遅れちゃうよ」



幼稚園バックを斜めにたすき掛けにした少年が、玄関先で靴のつま先をトントンと鳴らして待っている。



「待って、悠。えっと……窓OK、ガスOK、電気はと――」



準備万端の彼に対し、アタフタしながら指さし確認をして行く。

よく忘れるし、今日はこのまま仕事へ行くから念入りにしておかなくちゃ。

実際、数日前にもトイレの電気付けっぱなしだって悠に怒られたばかり。

こんなんじゃ、母親失格って言われても仕方がない。しっかりしなくちゃ。



「ボクがさっき確認したから、大丈夫だよ」



溜息をつきながら、冷ややかな視線を向けてくる。

生意気。全く、どっちが大人なんだか。

けれど、いつも注意されるのは私だから文句なんて言えない。

本当出来た息子で有難いやら、寂しいやら。

少しは子供らしく甘えてくれると、嬉しいんだけどな。

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