初恋の甘い仕上げ方
第一章

第一章



私が最近引っ越したマンションは、駅から徒歩五分の場所にある。

ゆるい上り坂の向こう側に灯るいくつかの灯り。

家族向けに建てられたというマンションは3LDKが中心で、戸数二十のこじんまりとしたマンションだ。

私が住んでいるのは、そのマンションの中でも小さな間取りの2LDKで、価格も幾分抑えられている。

就職して五年。

実家暮らしでとくに趣味を持たないせいか、思った以上に貯まっていたお金を頭金にして購入した。

二十五年払いでボーナス払いなし。

ボーナスは事務所の業績によって左右されるから頼ることはできないと兄さんに教えてもらい、返済は給与のみにしている。

月々の支払い金額を念頭に置き、悩みに悩み、考えに考え抜いて、契約書に捺印する直前まで胃をシクシク痛めながらも決断した大きな買い物だ。

無事に引っ越しを終えて一カ月。

これまで実家で生活していた私には何もかもが新鮮で、ホームシックに陥ることなく楽しく過ごしている。

朝食作りのついでにお弁当は毎日作っているけれど、さすがに夕食を毎日作るのは大変で、外食やコンビニのお世話になることも多い。

休日には手作りを心がけているとはいえまだ簡単な料理しか作れず、少しずつレパートリーを増やしていきたいと修行中だ。

そんな私にとって、駅からマンションへの道沿いにあるコンビニは、かなり重宝している。

このコンビニの存在も、マンション購入を決めた理由のひとつかもしれない。

毎晩帰りが遅い私には命綱のようでもあり、新商品が発売されると同時に並ぶことも多く、見過ごすわけにはいかないのだ。

このコンビニがなくては生活が成り立たないと言ってもいいほどだ。



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