空っぽのイヤホン(仮)
「白井、次のとこ、読め。」

びくり、と大げさな反応を示してしまって
聞いてないことは明らかなのに。

先生のセルフレームの眼鏡から見える切れ長の目と睨めっこ。

「はやくしろー。」とニヤニヤした笑みを浮かべられる。

「…聞いてませんでした。」

「教科書67ページ、四角の中。」

はい、と立ち上がってゆっくり読み出す。

暑さでボーッとしてるのか
ただの記号の羅列みたいに見えてきて

なんか…気持ち悪い…。

自分の立っているところが
ぐにゃり、と歪んでいく。

身体が落ちていくのがわかった。
< 18 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop