空っぽのイヤホン(仮)
靴を履き替えている間、じっと視線を送ってくる彼女。

さすがに気になる。

「えっと…何か、私に?」

改めて向き合ってみると、多少不機嫌そうな表情をしているものの
今まで会った誰よりも整った顔立ちをしていることがわかった。

思わず、息を飲んでしまうほど。

「単刀直入に言います。
五十嵐心と別れてください。」

「…は?」

別れるも何も、私、五十嵐とは付き合ってすらいない。

そんな勘違いが起こるということは、昨日会った萩野くんに聞いたとしか思えない。


…ていうかこの子、もしかして………

「…もしかして、聖奈さんですか?」

驚いたように見開かれた目に
「やっぱり」と思う。

彼女が五十嵐の好きな人、聖奈さんだったのか。
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