空っぽのイヤホン(仮)
ソファの上で手持ち無沙汰に待っていたら、程なくして愛子先生がトレイを持ってきてくれた。

目の前に置かれたホットミルクの水面を眺め、ふうっと息を吹きかける。

「恋のお悩みかな?」

不意に愛子先生がそんなことを言うから
「え」と顔を上げると

ふふ、と少し勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。

「…ドヤ顔。」

「してた?やだ。」

両手をほっぺにあてて、楽しそうに笑っている。

愛子先生みたいに可愛かったら、私ももっと勇気が出るのかな。なんて。

「気が向いたらでいいよ。
話したくなったら話して。」

こくん、と喉を伝うホットミルク。

愛子先生の淹れるそれは、いつも甘すぎるくらいで、つい、口が滑る。
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