保健室の眠り姫は体育教師の受難を夢に見る
まわる不埒なレター




木曜日。今日は、市野先生と顔を合わせずに済む時間割の日。

体育も保健もない。
ホームルームもない。



あっても数学の授業のとき窓から一方的に眺められるだけの安心の時間割だった。



三時間めの現国の時間。

香月先生の鼻にかかった音読を耳に入れないように意識を別のところへ飛ばす。

頬杖をついて外を眺めると心地よさそうな陽気。



中学まではいろいろ揉め事のあった教室も、高校になるとみんな大人になったのか嫌になるくらい平和になる。

何の問題もないクラスの中を、一枚の紙切れがくるくるまわる。

どこから始まったのか。後ろの席から前の席へ。1番前までいったら隣へ。誰ものけものにすることなく一枚の紙切れは、みんなで仲良くまわされた。




自分のところに紙切れがやってきて、つまみあげて中身を確認すると問いかけが一文。




〝いっちーとみちるちゃんがデキてるってまじ?〟




その下にぶら下がるようにしてコメントが書かれている。



〝え、ほんとならショック!〟

〝ソースどこ?〟

〝こないだ2人でいるの見た!〟







LINEが使えるこのご時世に、こういうところみんな意外とアナログが好きだなって思う。

ちょっとズレたことを考えて、少し胸が痛むのには知らんぷりをした。



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