Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜

4 練習試合




 みのりをアパートまで送りとどけたとき、遼太郎はみのりが部屋へと誘ってくれるという、淡い期待をした。しかし、みのりはそんな素振りを見せなかったので、そのまま挨拶を交わして、落胆しつつ帰らざるを得なかった。


――これで良かったのかもしれない…。


 遼太郎はそう思うことにした。
 遊園地でみのりを抱きしめていたとき、あそこが人の大勢いる遊園地でなかったら、きっとキス以上の行為に及んでいたと、思い返す。

 あの熱烈なキスの余韻が残る今、アパートという密室で、みのりと二人きりになったならば、自分は自分の中に巣食う欲望を制御出来なくなるだろう。
 みのりの意思など関係なく、みのりをベッドへ押し倒して、全てを求めてしまうだろう。


 遼太郎は自分の中の欲望を押しとどめるのに必死になったが、心も体も蕩けてしまいそうな甘いキスの感覚は、遼太郎の体に染み付き、四六時中意識の大半を占拠した。
 そして、気が付くと、妄想はキスのその向こうの行為へと及んでいる。


 辛うじて考えずにすむのは、試合に出るため、ラグビーの練習をしている時だけだった。
 しかし、第2グラウンドを離れた瞬間に、遼太郎の思考は一気にみのりで満たされる。特に夜、布団の中で暗闇に包まれると、みのりに触れることが頭から離れてくれない。

 自分の中に存在するみのりを抱きたいという願望を、遼太郎はもう否定できなかった。


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