ぼくのことだけ見てなよ
*そんなこと、わたしにはできません!!
あれから一ヶ月が経とうとしていた。美島との付き合いは、順調というか、なにも変わったことはなかった。

「はぁっ!?まだキスしてないって!?」
「ちょっ!松井!声、でかいからっ!!」
「ッ、あぁ、悪りぃ。だってよ、楓がまだ手出してないとか、ありえねぇだろ……」

昼休み。LINEで松井を呼び出し、美島のことで相談にのってもらっていた。

那津にも聞いてもらったけど〝なんでだろうね?もうちょっと待ってみたら?〟と言われて、待ってみたんだけど、2人きりになっても、ただ普通に話すだけ。

たまにギュッとはされるし〝椿姫、大好き〟なんて言葉も、たくさん言ってくれる。でも、そういうことは、する素振りもないんだ…。

「なぁ。楓となにか、なかったか?」
「……あった」
「どんなこと?」
「……一度、拒んだ」
「なんでまた」
「だ、だって!ココロの準備もできてなかったんだもん……」
「あー。まぁ、わからなくもないけどさぁ」
「ねぇ、松井…わたしは待つべき…?」
「う〜ん」

わたしがそう聞くと、顎に手を当て、首を傾げて考え始めた。そして、その答えをわたしにくれる。

「あれだな」
「なに…?」
「椿姫ちゃんから、するしかない!」
「えぇっ!?や、ヤダよ!ヤダに決まってんじゃん!!」

松井のアドバイスは、とんでもなかった。わたしから、するなんてゼッタイ無理!無理だから!!

「あははっ!冗談だよ」
「は…?冗談…?」
「うん、冗談」

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