二人一緒の夏
二人一緒の夏


田舎の夏祭りなんて、久しぶりのことだった。
お正月に帰ることはあっても、夏にはその年の暑さをいまいる場所で満喫するのが恒例になっていたから。

ただ、場所は違っても、一緒にいる相手はずっとずっと一緒だった。
少し前の夏までは……。

そうして、一人になって何度目かの夏に、私はこの町に帰ってきた。



「ゴロゴロしてばかりいないで、出かけてきたら?」

実家の居間にある古い扇風機が、ブーンと音を立てて回転している。
その目の前を占領して寝転がっている私へ、忙しなく動き回るついでのように母が言う。

太陽が真上にあるこんな時刻にわざわざ外出なんて。
小学生でもあるまいし。

私は、返事もせずに扇風機の風に当たり続けた。
そもそも、こんな田舎で外出なんて、どこへ行けというのか。

近所の大型スーパー?
まー、最近新しくなって、ショッピングモール? 並みに少し大きくはなったけれど。
そこだって夏休みのガキンチョがわさわさいて、落ち着かないに決まっている。

あとはおばちゃんたちのたまり場になっている、昔からある喫茶店くらいのもの。
映画館があるわけでも、カラオケやゲームセンターがあるわけでもない。
まして、おしゃれなカフェなんて程遠い田舎町なのだから。
ショッピングモールが出来たのだって、奇跡だと思ってるくらいなんだから。

ほかに行くところといえば、同級生の家くらいなもので。
それだって、私と一緒でこの田舎から出てしまっている人も多いし。
仲のよかった裕樹も、もうこの町にはいない。

って、裕樹のことは忘れるのっ。

もう、何を今更……。


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