俺様紳士の恋愛レッスン
5月上旬

運命のスレチガイ

「んもーぅ!」



面と向かって言えない不満は、モノに当たるのが一番だ。



「私は便利屋じゃないっての!」



腕の中でカサリと音を立てる紙束に、睨みを利かせる。

苛立ちの対象はもちろんソレではないのだけれど、こうして間接的にでも念を送っておかなければ気が済まない。



「ま、断れない私が悪いんだけどサ」



そう。全ては私の、この矛盾だらけの性格のせい。

我も気も強いくせに、情にはてんで弱い。

所謂、断れない人間。



「ま、ちょーど気分転換したいところだったし、いいけどね!」



そして行動の末端には、必ず言い訳を添える。

けれどこうして自分の行動を肯定してあげないと、身がもたない。


これは25年の人生で培ってきた、自己防衛術。

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