俺様紳士の恋愛レッスン
5月中旬

プライベートは誰のもの?

静穏な朝日が満ちた、物音一つ無い女子トイレ。

鏡に映るのは、久方ぶりに会う完璧に仕立てられた自分の顔。

仕上げに、買ったばかりのジョルジオ・アルマーニの春色リップを引いて、意気揚々とオフィスへ向かった。



「おっはよーん萌ッ!」

「おはよ、エン。朝からテンション高……」

「そりゃそーでしょ! だって今日は水曜日だよ!? す・い・よ・う・び!」

「はいはい。にしても髪、やっぱ切って正解だね。可愛い」

「もーえー! さっすが親友、愛してる!」



有り余るテンションをぶつけるように、萌にガバッと抱きつくと、「ハイハイ」と呆れ顔であしらわれた。



一昨日は美容院に行き、昨日はエステにも行った。


ほったらかしにしていた髪はバッサリ切り落とし、あごラインに揃えたショートボブに。

数年ぶりに行ったエステでは、ちょっぴり奮発してデコルテまでのコースにしてもらった。
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