坂道では自転車を降りて
「あのぉ。。ここにお家を作られると、ちょっと困るんですが。」
「ひゃっ。。なんとか、お引っ越し。。」
「願えませんかっ。ねっ。」

 蜘蛛に話しかけながら、追い出そうとしているらしい。変なヤツ。その後も「でひゃっ」とか、「うぉっ」とか言いながら、なんとか蜘蛛を追い出したらしい。窓を閉める音がした。
「はぁ。。ここ、一度、掃除した方がいいよな。なんかお宝も出て来そうだし。うふふ。」

 先輩に言われて資材の在庫を点検しているのか。ひとりで雑用なんて、気が滅入りそうなのに、なんか楽しそうだな。それとも、ちょっと寂しいから独り言が多いのかな。埃だらけの倉庫で、彼女が動いている様を想像し、笑みがこぼれる。俺がここにいることに多分気付いていないのだろう。

「角材のこれは、4x4が、にィしィ5本。あれ、これ違うじゃん。新しい方のノートはどこだ?」
4x4が5、4x4が5と唱えながら彼女はゴソゴソと倉庫の中を探している。新しいノートはこっちだ。早くとりに来い。
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