坂道では自転車を降りて
胸が苦しいのは誰なんだ?
 コンクールが終わるとほどなく、校内で実力テストなるものが実施された。試験の前日は放課後の校内での活動は全て停止になる。多分、試験問題が搬入されるからだ。

 帰宅前に部室に置いてあった荷物をとりに行くと、大野多恵と鉢合わせた。
 相変わらず、作り笑いを浮かべながら、逃げるように帰る彼女に、思わず声をかけた。俺はどうするつもりなんだ?いまさら。

「大野さん。」
「はい。」
こっちを見ない。自分の中に怒りが湧いてくるのが分かる。
「俺の事、避けてるよね。」
「。。。。そんなことないよ。」
言いながら、帰ろうとする。俺は彼女が出られないように、ドアの前に立った。

「俺、心当たりがないんだけど、、何かしたかな?」
努めて優しく、言ったつもりだが、彼女は怯えて俯いた。
「何も、してないよ。」
彼女の声は震えていた。俯いたまま、後ずさる。
「だったら、どうして、俺を避けるの?」
「ご、ごめんなさい。」
まずい、これでは尋問だ。だが、言葉は止まらない。
「はっきり言ってくれないかな。」

 しばらく対峙していると、いきなり背後でドアが開いて川村が入って来た。川村は俺と彼女の顔を交互に見ると、無言で荷物をまとめ始めた。その隙にドアを出ようとした彼女の腕を、俺は思わず掴んでいた。
「ひっ。」
悲鳴があがった。俺の頭に血が上る。
「まだ 話が終わってない。」
思わず、ドスのきいた声が出てしまった。もう、どうにでもなれだ。

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